発声練習や歌う前にウォーミングアップで行うことの多いリップロール。
リップロールははじめから練習なしでできる人と、できない人がいます。たとえできないからといって、落ち込む必要はありません。多くの場合できない原因があり、コツさえつかめばできるようになる人がほとんどです。
リップロールができない原因と対処法をご紹介するので、ぜひご自身のケースに照らし合わせてやってみてくださいね。
Contents
リップロールのやり方

- 唇を楽にして、軽く閉じる
- 唇の形をアヒルの口のようにとがらせ、口角で支えるようにして前に突き出す
- 唇のすき間から細く息を吐き、唇を振動させながら「プッ」と吐き、「ウー」という音につないで発声
リップロールのメリット
リップロールには、表情筋(顔まわりの筋肉)や声帯をリラックスさせ声をスムーズに出せる効果があります。
アマチュアからプロまで多くのミュージシャンが歌う前のウォーミングアップとして取り入れています。
リップロールは単にウォーミングアップとしてだけではなく、歌の上達にも効果があるトレーニング法です。
唇を震わせ続けるには息の量を一定にキープしなければならないので、適量の息を使って発声する感覚がつかめます。
結果、低音から高音までスムーズに声がつながったり、音程が安定したり、腹式呼吸の練習にもなるといったたくさんのメリットがあるトレーニング法です。

リップロール(りっぷろーる)とは、唇を軽く閉じた状態で小刻みに震わせながら、発声するトレーニングのことです。 固まった表情筋をほぐしたり、吐く息の量を均一にし呼吸筋を強化したりする目的があります。 プロのミュージシャンや、ボイト[…]
リップロールが全くできない場合の原因別対処法
リップロールがはじめからできる人とできない人の割合は、半々くらいだといわれています。

リップロールができない場合の対処法を原因別にみていきましょう。
原因1:口輪筋が固定できていない
リップロールの唇を支えるのには、口の周りの筋肉(口輪筋)を固定する力が必要です。
口輪筋がだらっと緩んだままの状態では、唇の形を支えられないのでリップロールがうまく振動しません。
また、頬の肉が薄い方などは、ちょっと支えづらく感じるかもしれません。
両手の人差し指で頬の肉を少し寄せるように支えるようにしましょう。
この時の注意点は、指が唇にかからないようにすること。指が唇に近すぎても、逆に唇が振動しづらくなります。
原因2:頬に空気が入っている
リップロールは本来、唇側に向かって息を流して振動を起こすもの。
呼気が頬に流れてしまうと、うまく振動が生み出せません。
原因3:唇が十分に前に突き出ていない
リップロールの時の唇の形は、いわゆる「アヒル口」です。
唇を前に突き出すようにしてとがらせます。
原因4:唇や喉に余計な力が入っている
リップロールは表情筋をほぐす効果がありますが、最初から凝り固まっている場合は唇に余計な力が入り、振動させにくいです。
歌う時と同様、喉に力が入っている場合も息を適切に流せずリップロールがうまくいきません。
まず、軽くストレッチして体をほぐします。
唇は楽に軽く閉じている状態で、リップロールをはじめてみましょう。
表情筋をほぐすには、マッサージも効果的です。
- 両手で頬をマッサージ。上下に円を描くようにして表情筋をほぐす
- 両手でおでこをマッサージ。円を描くようにしてゆっくりほぐす
- 舌を使って左右両方の頬を裏側から押して膨らませる。頬の筋肉を裏側からほぐす。
- 舌を一回転させるようにして動かし、口の下と上もしっかりほぐす
出典:シアーミュージック監修(2013)『基本のボイストレーニング』西東社(p.25)
原因5:最初に吐く息が弱い
リップロールは適量の息をキープしながら唇を震わせるトレーニングです。
息の量が少なく弱い場合、唇に十分な息が流れず唇を振動させられません。
原因6:唇が乾燥している
唇が乾燥していると、リップロールがやりづらくなります。
原因7:喉が乾燥している
唇と同様、喉の乾燥もリップロールに悪い影響を与えます。
水を飲んでからリップロールをしてみましょう。
お風呂に入りながら練習するのも、適度な湿度が保たれるのでおすすめです。
リップロールはできるが長く続かない場合の原因別対処法
リップロールは少しできるけど、10秒も続けられないという方の原因の多くは息の吐き方にあります。以下、原因別に対処法をみていきましょう。
原因1:吐く息の量が一定でない
リップロールは吐く息の量が多すぎても、少なすぎても安定しません。
長く続かないという原因で多いのが、息の量が途中で減っているパターンです。
適切な息の量を見つけるとリップロールが途切れにくくなります。
まずは短い秒数でもいいので、唇が振動する適切な息の量を把握します。
息の量が途中で減っていないかを確認しながら、徐々に長く吐いていきましょう。
原因2:唇が閉じていない
リップロールは、唇の細いすき間から息を通すイメージで行います。
唇が十分に閉じていないと、息を吐く時に余分な息が漏れて唇が振動しづらくなります。
唇を軽く閉じて、細いすき間からまっすぐに吐くイメージで行いましょう。
息を細く使うと、唇が振動しやすいです。
原因3:腹式呼吸ができていない
腹式呼吸は、横隔膜(みぞおちあたり)を意識的に動かして肺を伸縮させ、呼気をコントロールする呼吸法です。
原因4:声帯閉鎖ができていない
声帯を大きく開いたままだと、漏れる息の量が多くなります。
息の量が多いままリップロールすると、途中で息が途切れてリップロールも止まってしまいます。
母音の「うー」を発声し声帯が閉鎖されている感覚をつかみます。
その「うー」を軸としてリップロールを行いましょう。
原因5:声をつなげていない
リップロールで最初に「プッ」と息を吐いた状態で止まってしまっている可能性があります。
リップロールは絶対できないとダメ?
これまでご紹介した対処法を試しても、どうしてもリップロールができない人も一定数います。
確かにリップロールはできると声が使いやすくなり、歌う前のウォーミングアップとしても使える便利なトレーニング法です、
しかし、リップロールはあくまでも数あるトレーニング法のひとつであって、できないからといって歌が上達しないわけではありません。どうしてもできなければ、タングトリルやハミングなど他のトレーニング法を行うだけでも十分です。
まとめ
リップロールができない原因は人それぞれです。
ご自身にあてはまりそうな原因から、対策法を試してみてください。
それでもできない場合は、諦めてしまっても全く問題ありません。
